ぐちゃぐちゃなるあ

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夜の帳がおりきって、週末の喜びを感じつつ、家に帰りついた。おかえりーというお母さんの声に適当に返事をして部屋へ入る。時間は、もう8時半をまわっていて、普通だったら怒られるけれど、美咲の家、つまりは友達の家、でご飯を食べてきたので怒られるわけはなかった。

ベットに倒れこむ・・・けれど、制服に皺がつくのはめんどうくさいのでパジャマに早々に着替えた。床に転がっている鞄をベットから手を伸ばして取る。中から美咲に渡されたCDを出し、コンポに入れた。

美咲が言うには、キャラソンには当たりはずれがあるらしい。と、いうわけであのバカ曰く

「キャラソンにはね、確実に当たりはずれがあるの！それは歌詞だったり、声優だったり色々なんだけどね、自分が最初の10秒でこれ嫌だ、って思ったらぜったいはずれなの！」

それで？

「で、咲ちゃんのために最初の10秒だけ約200曲分キャラソンだけ入ってるCDを作りました！これを聞いて好きなのにはマル、嫌いなのにはバツつけて！そしたらそれだけのCD作ってあげる！」

いつだってやりたいことと、優しさがちょうどオレンジジュースと牛乳を混ぜた結果になる、それが美咲の特徴だ。今回の場合は、まず一つ目にわたしはキャラソンを聞きたいとは頼んでいない。二つ目に、当たりはずれについて話したこともない。・・・いつだって美咲は優しさと迷惑がごっちゃになっている。
オレンジジュースも、牛乳も、単品ずつだとおいしいのに、混ぜると最悪になるにきまっている。聞かせたいなら、美咲のお気に入りをCDにいれて渡してくれればいいし、選ばせてくれるんなら10秒だけじゃなくてフルコーラスで選ばせてくれればいいのに・・・。とは思うけれど、ふと気付けばヤツの陰謀にまんまとはまり、26曲目に丸をつけているのだった。

「お姉ちゃん、いる？」
「いない。」
「いるじゃん、嘘つかないでよ。」

ノックもせずに妹が入ってくる。わたしは48曲目にバツを大きくつけたところで、CDを止めた。起き上がると、キャミソールに短パンのお腹を壊さないか心配なパジャマで妹が立っていた。

「なに？」
「明日でかける？」

質問を質問で返された。なんで、と聞き返すと、なんでもいーから！と地団駄をふんだ。したから、お母さんがうるさーい！と叫んだ、けどお母さんそれもうるさいです。

「なんでよ？」
「あ、そ。でかけないんだよね、じゃあいいや。」
「でかけるけど？」

明日は美咲と美咲の彼氏と3人で買い物に行く。・・・なんで行くかは、あとで話したいと思う。
でかけるの？と妹が笑顔になった。この、アイドルにウツツを抜かしまくっている妹はわたしに何かをさせる気らしい。もう一度、でかける、と肯定してやると、封筒を差し出してきた。

「・・・何これ。」
「明日、このグループのCDでるの！買ってきてよ。」
「自分で行け！！」
「だって明日は違うグループのミュージカル行くんだもん！！」
「バカじゃない？アマゾンとかで予約すればいいじゃん・・・」
「だってアマゾンってその日に来ないんだもーん。だからツタヤに予約したから、帰りにでも取ってきて！お願い！これお金！おやすっみ！」

バタバタとドアを閉めて、隣の部屋に引っ込んだ。文句を言う隙もない。
これで、明日のエキストラ買い物が決定してしまった。ああ面倒くさい。どうして妹とわたしでこうも違う生き物が生まれちゃったんだろう。

時計を見ると9時半をさしている。急いでシャワーを浴び、キャラソンマルバツを再開して、200曲マルバツをつけ終わった時には、もう10時半を回っていた。
寝るには早いけど、今週はわりと宿題とかがたてこんでいて睡眠が少ない気がしたから、早めに寝る事にした。明日は買い物にも行くし。まあどう考えても早すぎだけど。

それでも寝る前に、下に降りて深夜番をふたつ予約するのは忘れなかった。一つはちょうど佳境に入ってきているところで、もうひとつは5分番組だ。5分番組のほうは、夜更かし王子という絵本か何かがもとらしいのだけれど、なんで深夜にやっているのかがわからない。・・・なんで予約してまで見るかなんて、聞かないで欲しい。声優が好き、それだけだから。

・・・あたし、これじゃあ予備軍じゃなくて本物？それはなーまだなー・・・と自分によくわからない言い訳をしながらベットに潜った。